2016年
心血管系および運動パフォーマンスにおける規格化されたビートルート抽出物の効果と安全性について、ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の概要を紹介する。
今日のスポーツ界では、運動選手間の競争はほぼ互角である。そのためトレーニングや競技成績に対する採取する栄養の影響に関心が集まっている。さらに近年のトレーニングプログラムにおいても、採取する栄養の重要性が注目され始めている。それというのも今日のアスリートは、競合相手に勝つために、簡単で実用的かつ達成可能な食事のアドバイスが必要だからである。
IJIRMS. 2016;1(9):376–83
近年、硝酸塩(NO3-)はサプリメントとして重要な注目を集めており、栄養補助食品として健康維持やパフォーマンス向上という点で注目されている。それは血管および代謝制御において重要なシグナル伝達分子である酸化窒素(NO)に変換されるためである。
ビートルートはNO3-の豊富な供給源であり、いくつかの研究において健康を促進する食物であると報告している。さらに近年の研究により、ビートルートの摂取がスポーツ選手において身体的耐久性や強壮作用を発揮する可能性が示されている。
目的:
健康なボランティアの心血管および運動能力に関して規格化されたビートルート抽出物の安全性および有効性を評価すること。
研究デザイン:
- このランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で、被験者は身体活動に問題はないが運動していない正常血圧値の健康な男性ボランティア20名(年齢:18〜55歳)であった。
- 被験者はプラセボ群(n=10)とサビート®摂取群(n=10)ランダムに分けた。
- フェーズIでは、被験者にサビート®(2%の硝酸塩で規格化されたビートルート抽出物)を含む被検食(各5g)を14日間毎日摂取するように指示した。
- フェーズⅡでは、7日間のウォッシュアウト期間の後、実験をさらに14日間続けた。
- 有効性は、血圧、心拍数、1回拍出量および心拍出量、ESRおよびHs-CRP、血漿中の一酸化窒素(NO)レベル、乳酸脱水素酵素値で評価した。
結果と考察:
- プラセボとサビート®の間で、ベースラインから最終来院までの間に、心血管および運動パフォーマンスにおいて統計的に有意な改善が観察された。
- 血漿NOレベルは、運動前に比べて運動後の方が低い(p <0.05)ことが判明したが、プラセボ群ではその差は認められなかった。これらの結果は、サビート®の摂取が循環するNOレベルを上昇させ、血流や筋肉の「ポンプ」および運動パフォーマンスが改善されることを示している(図1)
- 同様に、サビート®摂取群では運動前と比べて運動後にでは、乳酸脱水素酵素(LDH)値の低下が観察された(p <0.05)。これらのデータから、サビート®の摂取は運動後の筋肉内のLDH値が低下し筋肉の損傷が軽減されたと推測された(図2)
- hs-CRPおよびESR値における運動後のサビート®摂取は有意な低下を示し(p <0.05)、炎症状態を低下させる可能性を示唆した。
- 試験期間中に報告された副作用はなかった。
結論:
サビート®は心血管の機能を改善し、筋肉の損傷に対する保護的役割もあり運動パフォーマンスの向上に有益であると考えられる。