イントロダクション

運動栄養サプリメントとして食品由来の硝酸塩が担う役割はこの1世紀で研究され、適切な摂取量である場合、運動の効率やパワー出力、運動中のパフォーマンスの向上に良好な影響を与えることが示唆されている(Larsen et al., 2007)。

しかし、2009年まで運動栄養の分野において食品由来の硝酸塩、なかでもビートジュース(またはビートルートジュース)の肯定的な影響が知られていなかった(Bailey et al。、2009)。

無機硝酸塩(NO3-)は、ビートルートをはじめ数多くの緑色野菜に含まれている。ヒトでは、硝酸塩は摂取後亜硝酸塩(NO2- )に変換され、血液中に貯蔵され、循環する。低酸素条件下では、NO2-は重要な生理学的シグナル伝達分子である酸化窒素(NO)に変換され、血管および代謝制御において重要な役割を果たすことが知られている。

植物学的には、ビートルート(Beta vulgaris)は、ヒユ科に分類される1年草である。ビートルートには数種類あり、黄色~赤色の根塊の色で識別されている。しかし一番ポピュラーなのは濃い赤色である。

サビート®はビートの根塊の抽出物であり、無機硝酸塩の豊富な供給源である。

ビートルートはテーブルビート、ガーデンビート、レッドビートとも呼ばれ、その根はサラダで生のまま食べたり、調理されたりしている。また、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、ビタミンC、ベタインなど強力な抗酸化物質と栄養素の豊富な供給源であり、心臓血管の健康に重要である。ビートルートジュースは血圧を下げることが示されており、心血管障害の予防に役立つ。また食品着色剤としても使用されており、特にベタニンは、赤色食品着色剤(例えば、トマトペースト、ソース、デザート、ジャムおよびゼリー、アイスクリーム、スイーツおよび朝食用シリアルの着色剤)として使用される。

1970年代を中心に、ヒトの体内で無機硝酸塩がN - ニトロソ化合物に代謝されるという仮説が立てられていたため、発がん性があると考えられていた。しかし最近の研究で、硝酸塩の摂取は感染に対する防御、胃腸管の保護、運動能力の改善、および心血管疾患の予防等により健康に有益であることが示唆されている(Gilchrist et al., 2010)。